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【父が娘に伝える大日本帝国の物語】<R001>「軍歴証明書」から伝わってくる臨場感

 【父が娘に伝える大日本帝国の物語】<R001>本稿は、軍歴証明書を取寄せてみて分かった臨場感に纏わる物語です。

 歴史は人の手を介して伝えられるものであるから、そこには取捨選択が有り、伝えられる側も人であるが故に感情が添えられる。置かれた立場により大義が何通りも存在するから、起こった事実とそれぞれの事情を多面的に捉えようといった意識がいつも肝要だ。我が国の歴史の物語に触れることが、自分の生まれた国に対する興味と愛着、自身のルーツに対する敬意、自分の頭で考える未来に繋がれば嬉しいと思う。

「軍歴証明書」という存在

 大東亜戦争はわずか二世代前(筆者の祖父の世代)に実際にあったことだが、戦後80年が経とうとしている今では、遠い歴史の一部として、日々の暮らしの中で意識したり感じることが益々薄まっていっている。
 今となっては祖父に話を聞くことも叶わないのだが、ようやくこの歳になってから、祖父の体験をなぞりたい心境が増してきて、出身地の連隊や状況を調べたりするようになった。所属していた連隊をどうやったら調べれるかを探していく中で、「軍歴証明書」なるものの存在に行き着いた訳である。学校で教えてくれない、学校で教えるべきことの一つだろう。

「軍歴証明書」の取寄せ手続き

 職業軍人ではなく、陸軍に召集された一般人であれば、当人の終戦時の本籍地のある各都道府県の保健福祉部的な部署(恩給等を扱っている部署)にメール等で問い合わせ、当人の証明書の存在が確認出来れば、必要書類(申請者と軍歴証明書の対象人との関係を示す戸籍謄本の写し等)を郵送して取寄せることが可能だ。

 筆者が取寄せた北海道では、兵籍簿が紙媒体の原本とは別に、地域毎にマイクロフィルムにて保管されており、そこに記載されている事項を軍歴証明書として、担当職員がタイピングして作成したものを郵送してもらえる。ちなみに兵籍簿は永年にわたり保管される予定とのこと(作成された軍歴証明書は、照会者へ交付から5年間の保存期間となっているとのこと)。

「軍歴証明書」取扱い業務は都道府県で区々

 軍歴証明書を取り扱う業務の取り決めは都道府県で区々のようで、青森県の場合は、紙媒体の兵籍簿の保管期限を問い合わせたつもりが、過去に青森県が発行した軍歴証明書であれば、保存期間は30年とのズレた回答が来たり、照会等は電話か文書で実施することになっているからと以降のメールでのやりとりが出来なかったりする。

 また、青森県をはじめ一部の都道府県では、申請可能な者は対象者の三親等以内とされているところもあるようで(北海道と東京都は民法に規定する親族、すなわち六親等内の血族、配偶者、三親等内の姻族とされていた)、対象者の本籍地の都道府県次第では対象者の孫世代が取寄せる最後の機会となってしまう場合もあるようだ。

 申請にあたっての費用は、北海道の場合は必要書類の郵送料(角型2号:定型外120円)と、軍歴証明書を郵送してもらう郵送料(長型3号:定型84円)のみで、手数料や発行料といった類のものもなく、職員の対応を含めとても良心的に感じた。

「軍歴証明書」から分かること

 所属していた連隊や属人によって異なると思われるが、祖父の場合では、下記事項の記載が確認出来た。

3枚に渡って記載されていた軍歴証明書
  • 召集された回数、召集された期間
  • 所属した連隊
  • 進軍ルート、警備していた場所
  • 参加した作戦名、戦闘の場所
  • 負傷入退院歴、負傷理由
  • 叙位叙勲、進級任官

 2回の召集で、20代のうちの延べ4年4ヶ月も召集されていて、独立歩兵大隊を含め計5連隊に所属し、参加した作戦は5、戦闘数は22にも及ぶ。膝横貫通負傷により20日程度の入院をしている。この時の傷跡は、幼少期に祖父に見せてもらったことが思い出される。
 良く言われる8月15日が終戦ではない、ということが如実に現れていたのが、8月15日以降も地区警備に着いており、9月1日には上等兵から兵長に進級して、9月9日にようやく召集解除されている。

「軍歴証明書」が露にする臨場感

 教科書や著名な書籍等で数々触れてきた詳細な戦記を凌駕する臨場感が如実に迫ってくる。自身の20代と比較というか重ね合わせて思いを馳せたり、と自分の身近な肉親の話だけに急に当事者的な感覚が舞い降りてくる。良く生きて帰ってきてくれた、との感謝も生まれてくる(戦死していれば我々は生まれてない)。

 軍の行動単位である連隊の経緯や歴史を調べていけば、連隊長、師団長、軍司令官等の指示系統も分かるし、連隊史を紐解きながら、記録されている地名を元に色々と調べられそうだ(進軍、戦闘地のマッピングを作成中)。

 母方の祖父についても、可能性のある都道府県に問い合わせたものの残念ながら記録は残っていないとの回答であった。