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2nd Life from46

WBCの日本代表の戦いぶりと「唯一無二の存在、大谷翔平」を誇りに思う

 140㎞を超える球速でかつ40㎝以上も曲っているという、えげつない(最高級の誉め言葉として使用)スライダーが、「すごい光景だった。一生忘れない」と後に語った中村悠平捕手のミットに吸い込まれた瞬間、2009年大会以来3大会ぶり3度目の世界一が決まった。*サンケイスポーツ(3/22記事)

 筆者にとっては全くの他力による産物にはなるが、初戦の3月9日から決勝の3月22日までの13日間は今思い返しても幸せな時間を過ごさせてもらったという感謝がしみじみ湧いてくる。しばらくぶりにルーフバルコニーでの素振りに駆り立たせる衝動と興奮共々、この満ち溢れてくる幸福感を本ブログへも刻み残して置こうと思う。

異次元だった二刀流

 開幕戦(初戦の中国戦)の先発から、全試合でクリーンナップの3番打者として打率.435の高打率で君臨し、決勝戦ではクローザーとしても登板するという、文字通りの大谷劇場の中、世界ランキング1位で臨んだ第5回WBCは日本の優勝で幕を閉じた。

 メジャーのスターが居並ぶ中でも、大谷の打って、投げてという才能は突き抜けていることがデータからも導き出されている。打球の飛距離と打球速度、加えて投げた球速でも参加選手中トップの数値を計測しているのだ。

 今回のWBCで最も飛距離の出た打球は、大谷が12日のオーストラリア戦で放った自分の顔の看板を直撃した約136.5mの一撃で、打球速度が最も早かったのは、大谷が11日のチェコ戦での右翼への二塁打で叩き出した時速約191㎞。投げては、大谷が16日のイタリア戦で放った球速約164.1㎞がトップだったという。*Full-Count編集部(3/22記事)

 また、最後の打者となったトラウトは、MLBでMVPを3度も獲得している現役メジャーリーガーで最高の選手との呼び声が高い選手だが、大谷の前に3ストライクの全てを空振りしての三振であったが、メジャー通算6,174打席で、3ストライクすべて空振りの三振は24回しかない(0.39%の確率というあり得ないことが起きているという数値だ)。*日刊スポーツ新聞社(3/22記事)

大谷の存在感と人間性

 高校野球夏の地方予選3回戦止まりのチームの二軍の或る試合で投手で4番の経験がある(低)レベルの筆者が語るまでもなく、大谷翔平選手が成し遂げてきた二刀流という名のプレイヤーとしての数々の前人未踏の偉業は周知の事実だが、その存在感やチームに及ぼす影響度、人間性といった面でも超一流なのではないか、そう思わせるシーンやエピソードの数々に触れる機会となり、大変遅まきながら、大谷翔平選手の大ファンになったのである。

 準決勝のメキシコ戦の1点ビハインドで向えた最終回の攻撃、先頭打者の大谷翔平は、「必ず塁に出ると決めていた」と語ったというが、それをあの場面で二塁打という形で実現させていることに尊敬する。その走塁時にヘルメットを投げ捨てて一塁ベースを駆け抜け、二塁ベース上でベンチを鼓舞する姿にすっかり引き込まれたのは筆者だけではないはずだ。テレビの解説をしていた槙原寛己(元巨人)が「日本を一つにした」と語ったように、米FOXスポーツの解説で、MLBで通算696本塁打のレジェンド、アレックス・ロドリゲスも、「日本人選手はストイックで感情を表さないことで知られている」とした上で、「あんな翔平はみたことがない」と驚いた、とコメントしている。*スポニチアネックス(3/21記事)、東スポWEB(3/21記事)

大谷翔平という唯一無二の存在

 米国のマーク・デローサ監督は大谷を「野球界のユニコーン(唯一無二の存在)」と称賛を惜しまなかった。*日刊スポーツ新聞社(3/22記事)

勝戦前のロッカールームでのスピーチ

 日本代表は初戦の中国戦から、毎試合前に円陣を組み、声出し役によるメッセージで気合の注入と一致団結を図ってきたが、決勝戦前の大谷翔平のメッセージが、前述のレジェンド、アレックス・ロドリゲスをして「最も感銘を受けた」と言わしめる秀逸さだ。

 それは、選手が集まるロッカールームで栗山英樹監督から指名された後、概ね下記のように続く。
「僕から一個だけ。憧れるのをやめましょう。ファーストにゴールドシュミットがいたり、センターを見ればマイク・トラウトがいるし、外野にムーキー・ベッツがいたり、野球をやっていたら誰しも聞いたことがあるような選手たちがいると思う。憧れてしまっては超えられないので、僕らは今日超えるために、トップになるために来たので。今日一日だけは彼らへの憧れを捨てて、勝つことだけ考えていきましょう。さあ、行こう!」*Full-Count編集部(3/22記事)、THE ANSWER編集部(3/23記事)

 誰も傷つけないし、それどころか相手へのリスペクトが常にあって、本来の目的である気合の注入と一致団結にも強烈に繋がっている、大谷翔平人間性が現れている声出しだと思わせる。

優勝決定後のグランド上でのインタビュー

 優勝決定後のグラウンドで応じたインタビューでも、大谷の発言には心を打たれる。記者からの「世界一になり日本の野球がますます世界で注目されていきますね」といった趣旨の質問に対し、「日本だけではなく、韓国も台湾も中国も、その他の国も、もっともっと野球を大好きになってもらえるように、その一歩として優勝できたことがよかったなと思うし、そうなってくれることを願っています。」*読売新聞(3/22記事)

 優勝を決めた直後の興奮冷めやらぬ中でも、自国に閉じられた考え方なんてなくて、東アジアの隣国を含めた広い視野に立っての発言が吐露されてくるのである。

 もうここまで来ると最早、仏像や女神像を愛でる感覚に近い神々しささえ湧きおこってくる。正真正銘の超一流とはこういうことなのかもしれない。興奮の中にもこういった尊さが同居している感情が齎されることに特別感がある。

呼び覚まされた野球愛

 3戦目で対戦した本業が神経科医であるチェコ代表のパベル・ハジム監督は、「野球が息づき、同時に人生の他の価値観を尊重する国におめでとうを伝えます」と、含蓄のある言葉で世界一を奪還した日本代表を祝福してくれた。*日刊スポーツ新聞社(3/22記事)

 技術的に超一流のメンバが揃う日本代表でさえ、ダルビッシュがチーム招集当初の宮崎合宿から合流したり、フィールド外での飲みニケーション(夕食会かな)等のコミュニケーションの重要性であったり、相手をリスペクトした各選手の振る舞いであったり、見ている方の気持ちが暖かくもなり、大らかにもなる、日本を誇れる気分にさせてくれる2週間だった。サッカーやラグビーのW杯の日本代表戦でも興奮を抑えられないのは同じだが、WBCの今後の発展も大いに楽しみだ。

 「楽しみながらやれ」とは、筆者の高校球児時代にも良く使われた言い回しでもあるし、スポーツを語る時には良く聞く語り口ではあるが、大谷がチェコ戦で見せた三盗や、準々決勝のイタリア戦で見せたセーフティバント等、打って投げて以外にも野球の全ての要素で縦横無尽に暴れまわっているのを目の当たりすると、「楽しむ」ということはこういうことだったのか、と今更ながらに腑に落ちたりもする。

 大谷がクローザーとして登場した最終回、所属するエンゼルスのネビン監督が、試合前に「世界最高の2人が対決する試合を見たくない人なんているだろうか」と話していた通り、現在のMLBを代表する大谷とトラウトの夢の対決が実現し、「世界で最高の試合だった。あんなドラマを作れるスポーツは他にない。野球はその点では完璧だと思う」とコメントしたと伝えられたが、野球の凄さ、面白さを存分に味わさせてくれたことを実感する言葉だと思う。*日刊スポーツ新聞社(3/22記事)