今や流通、撮影、点検や農業といった分野等で産業利用されビジネスとして急成長しているドローン産業。ひと昔前はラジコンという遊びの領域であったはずのものが、立派なビジネスとして今や会社費用での研修まで実施される時代となっている。
筆者の現業に直接的には関連しないものの、ドローンの操縦をしたことのない全くの初心者向けの研修にエントリーし、前々から楽しみにしていた、ドローン研修(埼玉県熊谷市)に行ってきたので復習しておこう。
ドローン概要
世界のドローン業界を先導しているのは、約7割という圧倒的シェアを占めているとされるDJI社を擁する中国で、次いでフランス、アメリカとなっているようで、日本企業は後塵を拝しているようだ。
ドローンはもともとは、UAV(Unmanned Aerial Vehicle、無人航空機)と言われていたが、世界シェア2位のフランスのParrot(パロット)社が発売した、”AR.Drone”という機体が世界中でヒットして世間一般に定着したという。
プロペラは4個以上の偶数個あり、隣り合うプロペラの回転方向は逆(CW:ClockWise、時計周りとCCW:CounterClockWise、反時計回り)となっている。ドローンが空中で位置を保てるのは、学校で習ったこの作用反作用の法則のおかげということだ。
熱が籠るのを避けるためモーターのコイルが剥き出しになっており、水滴や砂塵が混入しやすく、混入すると故障に繋がりやすい。雨の日や風の強い日の飛行には向かないというわけだ。また、バッテリーの持ちが一般的にも30~40分程度ということで(実習中も数回取り換えていた)、まだまだ充電池の容量増と軽量化の開発が待たれるようだ。
法律と条令
ドローンの操縦には、自動車のように運転するのために必要な免許や資格取得は必須ではなく、目視内での操縦飛行は可能となっている。国家資格である一等ライセンス(一等無人航空機操縦士)、二等ライセンス(二等無人航空機操縦士)の他、民間の資格もあるが、国家資格を取得することで、目視外飛行、人口集中地区での飛行、夜間飛行等といった、出来ることが増えていく、というイメージだ。
だが、免許や資格が必要無いといっても、自由気ままに飛行出来るわけでは全くなく、各種法律等により罰則規定が定められている。
航空法
- 飛行空域
飛行は地表、水面から150m未満の空域に限定される。
人口集中地区の上空飛行は原則禁止(東京23区内や首都圏都市部はほぼ禁止区域になる)である。
令和2年 人口集中地区全国図(総務省統計局) - 飛行方法
目視範囲内に限る。
日中飛行(日の出から日没まで)に限る。
第三者及び第三者の物との間の距離は30mを保つ。
飲酒時の飛行操縦禁止。車の運転は、呼気中のアルコール濃度が0.15mg/ℓ以上で「酒気帯び運転」とみなされて運転を禁じられるが、ドローンにはその基準も無い(1滴のアルコールもダメということだ)。 - 許可承認
飛行する機体は予め国土交通省へ登録が必要。
原則禁止されている飛行空域や飛行方法での飛行が必要な際は、事前に国土交通省へ飛行申請をし許可を得ること。
小型無人機等飛行禁止法
国の重要な施設等周辺は飛行禁止とされる。
電波法
2.4GHz帯以外の帯域利用には免許が必要。
機体購入時には技適マーク(技術基準適合証明マーク)を確認すること。
道路交通法
公道にて飛行の際は道路使用許可申請にて許可を得ることが必要。
民法
第三者の所有する土地の上空を飛行する際には、予め許可を得ること。
個人情報保護法
撮影した第三者の顔、車のナンバー等の公開は肖像権侵害に当たる。
都道府県や市町村の条令等
例えば、東京都の都立公園、千葉県の県立都市公園では飛行禁止とされている。
明確に禁止された法律はないようだが、米軍基地、自衛隊基地周辺はトラブルの元になるので回避するのが賢明。
プライベートで趣味的にドローンを飛ばそうと思っても、事程左様にこれだけの制約(法令順守事項)があるから、気軽には行かなそうに感じた。
実技演習
さて、午後からは待ちに待った実機操作。モーターの始動のことを「アーム(ARM)します」と言い、「プロポ」と呼ぶコントローラーの左右のスティックを”ハの字”にして起動する。
「プロポ」の操作方法は、「モード2」と言われる海外で主流の前後左右が右スティックで一元的に操作可能なモードを選択。ちなみに、「モード1」は古からのラジコンヘリの操作モードで、日本では主流のようだが、左スティックで前後、右スティックで左右を操作するので、難しく感じる。
自身と離れた空間にある機体を立体的な位置感覚で捉えるといったことが、日常生活では無いため、三次元空間での位置取りは想像以上に難い。コーン(目印)の数メートル上空の位置でのビタ止めがスムーズにいかない。
通常は機能させているGPS機能をオフにした操縦にもチャレンジするも、ホバリングの態勢を保つのにも一苦労する。繊細かつ超ソフトタッチによる滑らかなコントロールが求められる。
高度149mまで上昇すると、機体は最早豆粒のように小さくて、機体の前方に位置する赤ランプも見えてるような見えてないような状態になる。終始上空を向いているため首も痛くなってくるが、目視飛行しないといけないため、目が離せない・・・。リクライニングチェアが欲しくなる。
カメラの性能の進化は著しく、100万円くらいする180倍ズームカメラを搭載したドローンで上空100mから撮影された映像を地上のモニターで見たが、2㎞以上先の熊谷駅の様子もはっきり分かる。これは盗撮の問題と紙一重になってくるなと感じた。
実機の操縦の他、シュミレーター(国家試験対策のソフト)や、ドローン飛行ゲームを実施したが、コントローラーを使用したゲームが得意な人には、ドローン飛行は断然向いていると思う。
江戸時代より、熊谷の銘菓として親しまれている「五家寶」を、創業250年以上(明和2年:1765年創業)の老舗、㈱紅葉屋本店で求めて帰途に着く。