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2nd Life from46

5☆『「目標が持てない時代」のキャリアデザイン』の読書感想

 今夜の読書感想は、『「目標が持てない時代」のキャリアデザイン』(著者:片岡裕司、阿由葉隆、北村祐三、発行所:日経BP、初版:2021年9月8日)です。
 2021年の年末に本著と出会い、2022年から”2ndLife”と銘打った新たな人生を歩み始めた着火剤であり、本ブログ「246blog」(2nd Life from46)を開設する契機にもなった(と言ってもブログの話は一切出てきませんが)、ある意味での原点回帰となる、恩義の厚い一冊である。

※記事中の「筆者」は当ブログの管理者のことです、「著者」と紛らわしいですが現在のところブログ内全てを筆者で通しているため悪しからずご了承ください。

人生100年時代」に必然の「目標喪失時代」

 著者である3名は昭和48年、49年生まれの筆者と同世代(偏差値教育を経て、有名大学に入学、名が知れて安定した会社に就職し、定年を迎え、老後も退職金で金銭的に不自由のない生活をすることを、最近まで当たり前の価値観として目指してきたギリギリの世代)の方々で、就職氷河期世代(30代、40代)を意識して著されていることもあって、これまで生きてきて積み重ねられてきた時代背景に重なる部分が多いためか、何かにつけてスムーズに腹落ちしてくる。

 ちなみに本著でいう「キャリア」とは、会社やある特定分野でのステップアップといった話というよりは、より大きな括りでの働き方や生き方、どんな自分でありたいかというニュアンスで「キャリア」という言葉を用いている。

本棚のホットポジションに鎮座する一冊。

 ロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授、アンドリュー・スコット教授が著した「LIFE SHIFT」が引き起こした「人生100年時代」というムーブメントにおける時代認識感の影響は多大で、各人の健康状況、年金の状況や投資利益率、所得の上昇(下降)ペースによって、もちろん大きく異なってくるものの、一般論として100歳まで生きるとすると、勤労時代に毎年所得の10%を貯蓄し、引退後は最終所得の50%相当の資金で毎年暮したいと考える場合には、概ね80歳まで働かないと実現出来ない、と「LIFE SHIFT」では示唆されている。

 このような働き方が激変する時代の特性と、これまでのキャリアを考える方法論がフィットしていないことに帰結して、当然のこととして起こる「目標喪失時代」において、新たな目標を生み出す方法論を会得していくことで、新しい目標を自分自身で生み出せる時代に変わる、というのが本著の底流にある主張だ。

「プロティアン・キャリア」理論

 これから必要とされる方法論の一つとして、ボストン大学経営大学院のダグラス・ティム・ホール教授が提唱した「プロティアン・キャリア」という、社会の変化に応じて「変幻自在」に「一人で数役を演じる」キャリアづくりが必要であり、可能だという考え方を一つの指針にしており、これまでの方法論は下記の3点で限界にきていることが示されている。

  • キャリアにおける正しい判断を個人でするのはもう限界
    複雑怪奇な社会に対応するには、自分で考えることに加えて、社会に蓄積された知性を関係性アプローチから利用していく方が良い。
  • 目標を一つに絞り過ぎることからくる目標喪失時のダメージ最大化
    日本人にその傾向が高いとされている、結果志向、外的成功志向を助長するのではなく、プロセスの充実から内的充実に目線を移す。
  • 目標の立て方のフレームワークの限界
    WILL(やりたいこと)×CAN(出来ること)×MUST(求められていること)の重なる部分に目標を見出す手法は、今や、WILLをより深めていくことを欠落させ、今出来ないことへのチャレンジを失わせ、現状維持志向を助長させる要因となってしまっている。

「プランド・ハプンスタンス」理論

 また、よりよい偶然に遭遇する機会を増やし、それをキャリア形成にうまく取り込むことが重要だとする、スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ教授が提唱する「プランド・ハプンスタンス理論(計画的偶発性理論)」では、幸運を引き寄せる行動として、5つの行動が挙げられている。

  • 好奇心を持った行動
  • 粘り強い行動
  • 柔軟な行動
  • 楽観的な行動
  • リスクを取る行動

 合わせて、「できること」で「やっていないこと」を積み上げていくことが人生を大きく変えていくことになると主張している。

限界突破の4つのステップ

 上記のような各種理論も参考にしつつ、「限界突破の4つのステップ」を取り入れていくことが推奨され、その手順について順序立てて説明が施される。

  • キャリアの目的(パーパス)を育てる
    こうありたいということを言語化出来るまで、過去現在未来から探求し続ける
  • 体質改善に取り組む
    多様な繋がりを広げ(他力)、新しいテーマへ絶えず挑戦し続ける
  • 目標をたくさんつくる
    ワクワク感を元に新たな行動を生み出していく
  • キャリアを楽しく実験する
    ワクワク感を大切に安全な状態でお試しする

 ちなみに、筆者もテーマとしている「ワクワク感」であるが、著者の定義は下記のように記されている。

 ワクワクするという感情をもう少し細かく見ると3つに分かれます。まず「心が躍る、和む」もの。この目標を思い浮かべるだけで、思わず笑顔がこぼれるような感覚です。次に「力がみなぎってくる」もの。これは、体が熱くなるような感覚があるかどうかです。そして最後は「使命感を感じる」もの。面白そうとか楽しそうというよりも、自分がやらなければ誰がやるのだ、という気持ちが出てくるものです。

限界突破の先にある発想

 北海道大学と共同で宇宙開発に取り組む植松電機の植松努社長の言葉も沁みる。

 植松社長は、「高級車に乗りたい」「海外の高級リゾートに行ってみたい」といった類のものは夢ではなく、自分ではない誰かが提供しているサービスに過ぎないと語っています。他人が提供するサービスを夢だと勘違いすると、夢を叶えていくためにどんどんお金が必要になってしまい、問題が起きると警鐘を鳴らしているのです。

 有名な名言とされる、アメリカの心理学者のウィリアム・ジェームズ(1842-1910)はこんな言葉を残している。

「心が変われば行動が変わる。/行動が変われば習慣が変わる。/習慣が変われば人格が変わる。/人格が変われば運命が変わる。」

 終章での激励も熱い。

  • 変化の時代に安定するということは、絶えず変化して、周囲に貢献できる自分であることを意味することとなる。
  • 新たなつながりを生み出すことで、自分を支えてくれる人をたくさん増やすこと、そして逆に誰かのキャリアを支えられる人になるということが、キャリアの本当の自律を意味する。
  • 社会の常識という壁(現在の社会構造から陳腐化してない?)と自分らしさという壁(自分らしさを矮小化してない?)を取り払うことは、次の世代に新しい生き方を提示していく責任にも繋がる。

 本稿は、ブログを始めた時からいつか書こうと思っていた題材であったが、期せずして昨晩の食卓で、長女から「パパの世代は100歳まで生きる比率はどのくらいなの?」と問いかけられたのを機に、記すこととした。(問いかけの解答にはなっていないけど・・・)

 人生における夢や目的を日常の生活の中で育み、模索し続けて、ワクワク感に包まれた中で新しいテーマへ絶えず挑戦していく予測不能な営みの中で、気が付けばそれらの結合の妙でオンリーワンになっている、そういうライフスタイルを目指していくんだろうな、という想いを再度確認出来たと思う。