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2nd Life from46

『神は完成を急がない 明日はもっといい仕事をしよう』ガウディとサグラダ・ファミリア展(東京国立近代美術館)

 スペインのバルセロナで140年以上も建設が続く“未完の世界遺産”サグラダ・ファミリア。本稿は、東京国立近代美術館にて開催されていた「ガウディとサグラダ・ファミリア展」の鑑賞記録です。会場でも流れていた、ガウディとサグラダ・ファミリアをテーマにしたNHKスペシャルの主題歌、”CURTAIN CALL”(haruka nakamura)を聞きながら。

第一章 ガウディとその時代

 19世紀半ばのバルセロナでは、産業革命による人口増加の影響もあって大量の貧困層が生まれており、そういった人々のための聖堂としてサグラダ・ファミリアは創案されました。ガウディは、建設が始まった翌年の1883年から、73歳で亡くなる1926年までの間、2代目の主任建築家として、人生を捧げるようにこの聖堂の建設に取組みました(現在は9代目に受け継がれています)。

 ガウディは、自身が思い描いた複雑な造形を、大量の模型として残しており、ガウディが亡くなった後もその構想に基づいて聖堂を作り続けることが可能だったのですが、1936年からのスペイン内戦によって、模型は壊されたり消失したりしてしまったようです。その後は、ガウディの遺志を引き継いだ芸術家達によって、ガウディが残した作品や遺志を読み解きながら作り続けられています。

東京会場の東京国立近代美術館

第二章 ガウディの創造の源泉

 ガウディの建築に関する発想や系譜を紐解いていくと、ネオゴシックと言われる過去の様式のリバイバル建築だったり、破砕したタイルを使用したデザイン性、生命、オーガニックといった自然の法則への執拗なこだわりと尊重、直線がつくり出す曲線美、境目の無い色等々の様々なキーワードがある。

 中でも、外観における洞窟のような形状の放物線は、10年の歳月を要した重力に則った「逆さ吊り実験」を経て、幾何学的なアプローチによって究極の安定性を誇る「釣り合いの法則」を編み出したと言われています。

 建物を支える螺旋柱の構造もとても興味深く、6角形~12角形の根本から、上に上がっていくほどに、32角形や64角形と稜線が増していき、最も上の部分に至ってはまっさらな円柱へと変遷していきます。

森の中にいるような柱の作りと光の差し込み具合で変化するステンド硝子

第三章 サグラダ・ファミリアの軌跡

筆者が生まれた頃のサグラダ・ファミリア

 イエス・キリストの誕生を知らせたとされるベツレヘムの星をモチーフにした、八芒星(八つの角を持つ星型多角形)を頂きに冠する「マリアの塔」が2021年12月に完成。高さ138mは、現在完成している塔の中では最も高く、全ての塔が完成した後でも2番目の高さになる。

 そして、高さ172m、完成すれば世界一高い教会となるとされる「イエスの塔」の建設が、ガウディ没後100年となる2026年の完成を目指して進んでいます。

白:既に建設が完了している部分、茶色:これから建設する部分(2023年6月現在)

第四章 ガウディの遺伝子

 会場にはサグラダ・ファミリアの主任彫刻家として活躍する外尾悦郎による作品である、「降誕のファサード」の彫刻群(石像が完成するまでの10年間実際にサグラダ・ファミリアで飾られていたもの)も展示されています。

外尾悦郎の作品が散りばめられている降誕のファサード(正面)

 「神は完成を急がない。明日はもっといい仕事をしよう。」

 これは、ガウディや関係者が残した様々な名言が紹介されている中の一つで、ガウディが仕事上がりに仲間に話した言葉とされるもののようだが、筆者のようなサラリーマン中間管理職には全くない発想と世界観であるが故なのか、猛烈にハートビートさせられた言葉になった。

 生前にとどまらず死後においてもこれだけ世界中のたくさんの人々に平和と祈りのシンボルとして心にとどめさせ続けていることは、飛び抜けた芸術的建築と合わせて、正に偉業そのものだと言えるだろう。

 そして未完であるが故の、現在進行形と積み重ねられていく奥深さに更なるブランド価値が纏われている気がしてくる。

 現地入りで鑑賞出来るのが一番だとは思うけど、なかなか気軽には行くことが叶わないので、東京開催は終了しましたが、これから滋賀会場(佐川美術館)と名古屋会場(名古屋市美術館)での開催が予定されているようなので、お近くの方は是非!