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動きと音の調和が心に熱として残る”オレンジの悪魔”(京都橘高等学校吹奏楽部)

 ログインしていないYouTubeで偶然に目にした、京都橘高校吹奏楽部の動画。およそ楽器を演奏しながらの動きとは思えない、一糸乱れぬ集団のパフォーマンスに引き込まれて連日動画を漁っている。筆者は知らなかったが、全国的どころか世界的にも”オレンジの悪魔”という愛称で知られている有名なマーチングの吹奏楽部であることを学んだ。

「得難い経験」重視の部活指導

 京都橘高校吹奏楽部では、1975年(昭和50年)のイギリスのヨークシャー州で行われた音楽祭「国際フェスティバル」への出場を皮切りに、例年海外での演奏の場数を踏んで来ている部活だ。「音楽は人生における経験が音に表現される」という思想の下、熱心な顧問のプロデュースによって数々の海外での演奏の舞台が用意されてきた。

 筆者が調べただけでも、アトランタオリンピックアメリジョージア州、1996年(平成8年))、ローズパレードアメリカリフォルニア州パサデナ、2012年(平成24年)、2018年(平成30年))、アメリハワイ州カウアイ島でのホームステイ、台湾の建国記念日双十節に台日友情50周年式典への特別招待(2022年(令和4年))等があり、2025年(令和7年)には日本で唯一複数回出場しているローズパレードヘ3回目となる招待を受けている。

京都橘高等学校吹奏楽

 古から日本固有の柑橘類として愛されてきた「橘」を名に掲げる京都橘高等学校は、京都市伏見区桃山町(地理感の無い関東の人間である筆者からすると由緒正しさを感じるような土地)にあり、1902年(明治35年)に京都手藝女学校として創立された伝統校である。2000年(平成12年)に男女共学化を実施し、校名を「京都橘高等学校」に改称している。

 吹奏楽部は、1961年(昭和36年)に平松久司が創部し、1995年(年)まで顧問を務め、同年から2018年までは田中宏幸、現在は兼城裕が顧問を務めている。2023年8月の『ニューズウィーク日本版』の恒例企画、「世界が尊敬する日本人100」の中に、京都橘高校吹奏楽部が選ばれている。

 実際の京都橘の実力はどうなんだろうということで、2013年(平成25年)~2023年(令和5年)の(2020年のコロナ禍での中止除く)直近の10年間の全国大会:全日本マーチングコンテストの結果を見てみると、全国大会には5回出場して金賞4回獲得、と確かに名門と呼ばれるに値する実績を有していることが分かる。

”オレンジの悪魔”に惹き付けられる理由

12歳の頃に購入したYAMAHA TRUMPET YTR-3320

 小学6年生の頃にそれまでの自分の貯金をはたいてトランペットを購入した吹奏楽への漠然とした長い憧れや、女子高生を娘に持つ父親的深層心理、高校野球の甲子園予選に似た高校生という時代の一過性かつ不可逆性の持つ希少性といったような、前提なり背景となるベースがあるような気もするものの、その圧倒的なパフォーマンスに対する驚きから始まり、楽しそうで心打たれて、見ている側に幸せを齎せる、全日本吹奏楽連盟が推奨する、音色重視でありつつも吹奏楽団がそのまま歩き出す、所謂カレッジスタイルと言われる、誰かを応援するバンド、”橘スタイル”の真骨頂がそこにある。

 息が苦しい中吹き続けるための、楽器を持ってさえいなかったら運動部と称される、徹底した体幹レーニングと、演奏会場を選ばない、どんな会場でもそこに合わせて演技演奏が出来る、水みたいな団体という特徴も合わせ持つ。

 考えてみれば、誰かを応援するバンドに、どこにでも合わせられる水のような滑らかさはぴったりです。誰にも必要で、みんなの渇きを癒し、元気にしてくれる水。でも特別なものとは誰も思わない、ごく身近な存在である水。応援というのは、そんなさりげない形で暮らしに溶け込んでもいい。
『オレンジの悪魔は教えずに育てる』著者:田中宏幸、発行所:ダイヤモンド社、初版:2021年1月26日

心に熱が残る楽曲の数々

  • 『Fireball』
    2016年(平成28年)の113期生から登場する、アメリカのラッパー、ピットブルが2014年(平成26年)にリリースして曲。2018年(平成30年)のローズパレードでも圧巻のパフォーマンスを披露している。

KYOTO TACHIBANA HIGH SCHOOL GREEN BAND - ROSE PARADE 2018【GBA Official

www.youtube.com

  • 『Winter Games』
     カナダの音楽家、デイヴィッド・フォスター(David Foster)による、1988年(昭和63年)のカルガリー冬季オリンピックのテーマ曲。
  • 『Soul Finger』
     アメリカ最古のファンクバンドとも呼ばれる、バーケイズ(Bar-Kays)が1967年(昭和42年)にリリースした曲。
  • 『Sing Sing Sing』と『Swing, Swing, Swing!』の合わせ技
     2005年(平成17年)の102期生によって、ダンスエンターテイメント「BURN THE FLOOR」から発想を得て生まれた、京都橘の代名詞ともなっている曲。
     2008年(平成20年)の105期生によって、「スター・ウォーズ」に代表される数々の映画音楽を作曲してきたジョン・ウィリアムズ(John Williams)が、”Sing Sing Sing”のパロディとして作曲したとされる”Swing, Swing, Swing!”との折衷版(シング、スウィング)が初披露される。
  • 『僕らは強くなれる。』
    2020年(令和2年)に安斉かれんがリリースした曲。プロ(エイベックス)が作るPVはやはり凄い(それに応えられる京都橘も凄い)。

安斉かれん / 僕らは強くなれる。(Marching Band Ver.)
starring 京都橘高校吹奏楽部/ Kyoto Tachibana SHS Band

www.youtube.com

  • 『Fanfare For Tachibana』
     これから始まるパフォーマンスの期待が高まる橘オリジナルのファンファーレ。

 原曲を超える吹奏楽仕様への仕上がりと、マーチングバンドの魅力である動きと音の調和(それも大人数で実現している)、”音楽は聴く人見る人のためにある”という”橘スタイル”によって、筆者が知らなかった未知の世界への拡がりを感じさせてくれている。